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ミリタリーNOW
軍用機/世界の軍事情勢

米海軍MH-60を2050年代まで近代化へ TALON「オープン化」計画、企業選定は契約確定前

 
米海軍のMH-60Rシーホーク。機体全体が確認できる公式写真

画像:U.S. Navy/DVIDS Photo ID 1159843、Public Domain。写真は現用MH-60Rで、TALON試作機そのものではありません。

米海軍は2026年8月19日、MH-60R/Sシーホークの長期近代化を進める「TALON」試作プロジェクトで、第1段階の作業へ進む企業を特定したと発表しました。狙いは機体を新造することではなく、電子機器と任務システムの構造を入れ替えやすくし、旧式化する部品への対応を進めることです。ただし、今回の企業特定は正式な契約・協定の受注決定ではありません。

TALONは「機体更新」より、電子機器の土台を作り替える計画

TALONは「Tailorable Architecture Leveraging Open-systems」の略称です。米海軍のH-60多用途ヘリコプター計画室PMA-299が、オーストラリア海軍と共同で進めています。

中心になるのは、飛行に不可欠なアビオニクス、つまり航法・飛行制御などの電子機器と、任務システムを支えるデジタル基盤です。米海軍はモジュラー・オープン・システムズ・アプローチ(MOSA)を採り、機器やソフトウェアの接続方法を標準化して、将来の更新でシステム全体を一から作り直す負担を減らす考えです。

発表では、TALONによって複数の陳腐化問題を解消しながら、MH-60の運用を「2050年の時間軸」まで支えるとしています。これは全ての現存機が必ず2050年まで飛ぶという意味ではなく、MH-60部隊を長期に維持するための近代化基盤を整える目標です。

MH-60RとMH-60Sで、機体統合の担当企業が分かれた

米海軍は今回、3つの役割ごとに企業を特定しました。機体への物理的・構造的な統合を担当するLead Aircraft Integratorでは、MH-60SをSierra Nevada Corporation、MH-60RをLockheed Martin Rotary and Mission Systemsが担当候補となりました。

飛行重要アビオニクスとDigital Backboneの設計・ソフトウェア統合を担うSegment Lead Integratorには、Rockwell CollinsとLockheed Martin RMSが特定されています。さらに、オープン化が仕様どおり実装されているかを第三者として検証する役割にはTechnology Security Associatesが選ばれました。

ここで重要なのは、米海軍自身が「正式な契約または協定の受注を意味しない」と明記している点です。第1段階の作業範囲について交渉し、最終確定できた場合に次へ進みます。そのため「米海軍が各社へTALON契約を正式発注した」と表現するのは現時点では早すぎます。

第1段階は設計と実機準備、第2段階で試作・検証へ

Phase 1では、飛行重要アビオニクスとDigital Backboneの予備設計、共同デジタルエンジニアリング環境の構築、既存機の状態把握を進めます。機体側では物理統合、構造改修、装備を取り付けるためのA-kit製作、機体レベル試験の準備までが含まれます。

Phase 2は試作機の開発と検証です。発表時点では、試作機の初飛行日、改修する総機数、計画総額などは公表されていません。公開されていない数字を埋めて「何機がいつまでに改修される」と断定できる段階ではありません。

なぜ豪海軍と共同なのか

オーストラリア海軍もMH-60Rを運用しており、米海軍はTALONを共同協力事業として進めています。共通のオープン構造を持てれば、将来のセンサーやソフトウェア更新で米豪が別々の基盤を維持する負担を減らせる可能性があります。

ただし今回の発表は、オーストラリアの全MH-60Rを一斉に同じ仕様へ改修する最終決定を意味するものではありません。確認できるのは、PMA-299と豪海軍がTALONを共同で進めているという範囲です。

MH-60の次の機体にも「電子機器の共通土台」を持ち越す

米海軍は、TALONのオープンアーキテクチャを将来のFuture Vertical Lift(Maritime Strike)にも持ち運べる中核構造にする方針を示しています。つまり、MH-60だけの延命策で終わらせず、次世代の海軍回転翼機へ移る際にもソフトウェアや統合手法を再利用しやすくする狙いがあります。

一方で、TALONそのものがMH-60後継機というわけではありません。TALONは現用MH-60の近代化プロジェクトであり、Future Vertical Lift(Maritime Strike)は将来の別計画です。この二つを同じ機体計画として扱うのは誤りです。

MH-60RとMH-60Sは同じシーホークでも任務が違う

米海軍によると、MH-60Rは対潜水艦戦、対水上戦、電子戦、指揮統制などを担います。MH-60Sは対水上戦、戦闘捜索救難、特殊作戦支援、航空機雷対処などが主要任務です。

TALONで共通のデジタル基盤を整えつつ、R型とS型それぞれの機体統合を分けて進めるのは、この任務と搭載システムの違いがあるためです。今回の発表で注目すべきなのは、単なる「古いヘリの延命」ではなく、将来の更新速度そのものを変えようとしている点です。

参考資料

2026年8月21日時点の公開資料をもとに整理しています。正式契約、総事業費、改修機数、試作機の初飛行時期など、公表されていない事項は断定していません。