豪・比・米、フィリピンEEZで7日間の海上訓練 対潜戦と洋上補給を反復

画像:U.S. Navy photo by Petty Officer 2nd Class Alexander Klee/Commander, U.S. 7th Fleet。DVIDS Photo ID 9887448、VIRIN 260823-N-QM517-2944、Public Domain。USS Santa Barbara、フィリピン沿岸警備隊BRP Teresa Magbanua、フィリピン海軍BRP Diego Silangと上空のフィリピン空軍機を同一画面で確認できる公式写真です。
豪州、フィリピン、米国は2026年8月19日から25日まで、フィリピンの排他的経済水域(EEZ)でMultilateral Maritime Cooperative Activity(MCA、海上協力活動)を実施しました。米第7艦隊の公式発表では、7日間に対潜水艦戦、洋上補給、ヘリコプターによる垂直補給、捜索救難、艦上着艦資格訓練、臨検手順などを行っています。単なる編隊航行ではなく、探知・補給・航空運用を組み合わせた海上訓練です。
8月19~25日、フィリピンEEZで7日間
米第7艦隊と豪国防省は、今回のMCAが8月19日から25日までフィリピンEEZ内で行われたと発表しています。米側は今回を2026年に入って10回目のMCAと説明し、過去のMCAで積み上げた対潜水艦戦の手順をさらに発展させたとしています。
MCAは、複数国の海軍や航空部隊が同じ海空域で通信、航法、補給、捜索救難などを合わせる活動です。今回の公式資料は、航行の自由や国際法への適合を強調していますが、特定国を「仮想敵」とする作戦計画は公表していません。
主力はHMAS Supply、BRP Diego Silang、USS Santa Barbara
公表資料で共通して確認できる主力艦は、豪海軍の補給艦HMAS Supply、フィリピン海軍の新型フリゲートBRP Diego Silang、フィリピン沿岸警備隊のBRP Teresa Magbanua、米海軍のIndependence級沿海域戦闘艦USS Santa Barbaraです。豪州と米国はそれぞれP-8A Poseidon哨戒機を投入し、豪海軍はMH-60R Seahawkも参加させました。
フィリピン側はFA-50戦闘機やC-208B監視機などを投入しました。フィリピン政府系PNAが引用したフィリピン軍発表では、さらにW-3A Sokol捜索救難ヘリも挙げています。各国の公表資料で細部の列挙が一致しないため、本記事では共通して確認できる装備を中心に整理します。
対潜戦と補給を同じ7日間で繰り返した意味
今回の特徴は、対潜水艦戦だけでなく、replenishment-at-sea(洋上補給)とvertical replenishment(ヘリコプターによる垂直補給)を同じ活動に組み込んだ点です。海上部隊は潜水艦を探す能力だけでなく、長時間活動を続けるための燃料や物資を受け取る能力も必要です。
米第7艦隊は、今回のMCAが過去に行った対潜水艦戦の訓練項目を発展させたと説明しています。ただし、実際に潜水艦が参加したのか、どのような探知距離・戦術を試したのか、想定した相手がどの国だったのかは公表されていません。公開情報から性能や作戦計画を推定するのは避けるべきです。
「2026年10回目」と「通算19回目」は矛盾しない
回数について、米第7艦隊は今回を「2026年10回目のMCA」としています。一方、フィリピン政府系PNAが引用したフィリピン軍発表は「西フィリピン海での19回目のMMCA」と説明し、初回は2024年4月7日だったとしています。
つまり米側は2026年の年間回数、フィリピン側は2024年4月からの通算回数という別の数え方を示しています。10回目と19回目のどちらかが誤りだと決めつけるのではなく、集計期間が違う数字として読むのが妥当です。
比海軍ヘリはAW159かAW109か 一次資料で記載が分かれる
参加したフィリピン海軍ヘリコプターの型式は、一次資料同士で記載が一致していません。米第7艦隊はAW159 Wildcatと記載していますが、豪国防省はAW109、フィリピン政府系PNAが引用したフィリピン軍発表もAW-109としています。
このため、本記事では搭載ヘリの型式を確定情報として扱いません。装備名のような具体的な固有名詞は、複数の公式資料が食い違う場合に写真だけから補完せず、差異そのものを読者へ示す方が安全です。
豪州は2016年の南シナ海仲裁判断にも言及
豪国防省は8月26日の発表で、国際法や海洋の権利に加え、2016年の南シナ海仲裁判断に言及しています。これは豪州政府が今回のMCAを説明する際に示した政策的な位置付けです。
一方で、米第7艦隊の今回の公式記事は活動を国際法に整合して実施したと説明していますが、特定国への攻撃訓練や封鎖訓練とはしていません。記事上も、公開資料にない「対中作戦の予行」といった断定は行いません。
今回のMCAから確実に言えること
確実に確認できるのは、豪・比・米の艦艇と航空機が7日間にわたり、対潜水艦戦、補給、捜索救難、航空運用など複数分野の手順を合わせたことです。とくにP-8A、艦載ヘリ、補給艦、沿海域戦闘艦、フリゲートを組み合わせたことで、海上監視と継続運用を同時に訓練する形になりました。
ただし、公開資料から潜水艦探知性能、武器使用の想定、特定国への作戦計画、実戦時の部隊編成を確定することはできません。MCAの意味は、公開された範囲では「複数国が同じ海空域で共通手順を実際に反復した」という点にあります。
参考資料
- Commander, U.S. 7th Fleet / DVIDS:Australia, Philippine, U.S. forces conduct Multilateral Maritime Cooperative Activity(2026-08-25)
- Australian Department of Defence:Australia, the Philippines and the United States demonstrate collective resolve through Maritime Cooperative Activity(2026-08-26)
- Philippine News Agency:19th MMCA in WPS with US, Australia successful - AFP(2026-08-26)
- U.S. 7th Fleet / DVIDS:Photo ID 9887448(Public Domain)
- Commander, Destroyer Squadron 7 / DVIDS:USS Mobile (LCS 26) Participates in MCA(Video ID 920489、2024年の別MCA参考映像、Public Domain)
2026年8月26日時点の米第7艦隊、豪国防省、フィリピン政府系PNA/DVIDSの公開資料をもとに整理しています。参加装備の型式で一次資料が食い違う箇所は差異を明記し、特定国を仮想敵とする作戦意図、未公表の探知性能や作戦計画は推定していません。
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