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NATO、対ドローンに5年で400億ドル超 共同市場と「操縦者5倍」の狙い

 
海岸に展開した対ドローン防空システムのセンサーと、上空を飛ぶ無人機

画像:対ドローン実証イベント「Digital Shield」(エストニア、2026年3月5日)/U.S. Army photo by Pfc. Gabriel Martinez / DVIDS / Public Domain

NATOは対ドローン防空を「一部の専門部隊が持つ装備」から、同盟全体で大量調達・大量訓練する能力へ変えようとしています。2026年7月7日、NATO加盟国は今後5年間で対ドローン能力に400億ドル超を投資し、2027年末までにドローン操縦者の訓練規模を5倍にする方針を発表しました。ただし、この400億ドルはNATO本部が単独で支出する一つの予算ではなく、加盟国による投資をまとめた数字です。

加盟国が5年間で400億ドル超を対ドローンへ

NATOは2026年7月7日の防衛産業フォーラムで、加盟国が今後5年間に対ドローン能力へ400億ドル超を投資すると発表しました。小型無人機や一方向攻撃型ドローンが戦場で急速に普及する中、探知、識別、追跡、妨害、迎撃を多層的に組み合わせる必要が高まったためです。

重要なのは金額の読み方です。公式発表は「NATO Allies」、つまり加盟国による投資として説明しており、NATO共通予算から一括して400億ドルを購入するという意味ではありません。各国が自国の防空能力を整備しつつ、NATO共通の試験・標準・調達枠組みに接続する構想です。

共同の「対ドローン市場」を作る

NATOは迅速な調達を支えるため、NATOで試験され、互換性を確認された対ドローン装備を加盟国が購入しやすくする共同市場を整備します。これと並行して米陸軍も、同盟国・友好国向けのUAS/C-UAS Marketplaceを拡大しています。

米陸軍は2026年6月、従来は国ごとに数年単位で調達していた対ドローン装備について、共通データ標準と需要集約を使い、複数国が同じ実証済みシステムへ迅速にアクセスできる仕組みを説明しました。レーダー、センサー、電子戦装置、迎撃システム、物理的防護まで対象に含める考えです。

狙いは単純な「共同購入」だけではありません。同じ通信規格やデータ形式でつながる装備を増やし、ある国のセンサーで捉えた目標情報を別の国の指揮統制や迎撃手段へ渡しやすくすることが重要になります。

2027年末までにドローン操縦者の訓練を5倍へ

NATOは装備だけでなく人員面も拡大します。2027年末までにドローン操縦者の訓練規模を現在の5倍にする目標を示しました。そのため、加盟国が共同で航空要員を訓練するNATO Flight Training Europe(NFTE)の仕組みをドローン操縦者にも広げます。

2026年7月時点でNFTEにはフィンランド、フランス、スウェーデンが新たに加わり、参加国が利用できる訓練拠点は8か国16か所とNATOは説明しています。ドローンを大量に調達しても、操縦、整備、電波管理、戦術運用を担う人員が不足すれば実戦能力にはなりません。今回の計画は装備と訓練を同時に増やす点に特徴があります。

東部戦線ではすでに実証が進む

NATOは机上の計画だけでなく、東部戦線で実装試験を進めています。2026年5月のProject Flytrap 5.0では、米英の部隊と企業がリトアニアで無人機、対ドローン装備、通信ネットワークを実戦に近い条件で統合しました。6月にはスロバキアでTask Force X Eastern Flank Deterrence Initiativeの試験が行われ、複数のドローン、地上無人車両、通信システムなどが評価されています。

またNATO Allied Command Transformationは、Layered Counter-UAS Initiative(LCI-X)で、個別の対ドローン部隊をNATOの指揮統制システムへ接続し、複数拠点を連動させる試験を進めています。対ドローン能力を単独装備ではなく「センサーから指揮統制、迎撃までをつないだネットワーク」として構築する方向です。

400億ドルでも「万能なドローン防空」が完成するわけではない

投資額が大きくても、ドローン防空には依然として難題があります。小型ドローンは安価で大量投入しやすく、迎撃側が高価なミサイルだけに頼ると費用交換比が悪化します。逆に電子妨害だけでは、自律航法や光ファイバー誘導など電波妨害の影響を受けにくい方式へ十分対応できない場合があります。

そのためNATOが重視しているのは、レーダーや光学センサー、電子戦、低コスト迎撃機、従来型の防空火器などを組み合わせる多層防御です。どの装備を何基購入するか、400億ドルの国別内訳、各システムの配備数などはNATOの今回の発表だけでは確定できません。

まとめ

NATOの対ドローン政策は、個別の新兵器を導入する話から、同盟全体で調達、標準化、訓練、ネットワーク化を進める段階へ移っています。5年間で400億ドル超という規模に加え、2027年末までに操縦者訓練を5倍へ拡大する目標は、無人機対策を恒常的な防空能力として組み込む意思を示しています。

一方で、400億ドルを「NATO本部が単独で使う対ドローン予算」と表現するのは正確ではありません。現時点で確認できるのは加盟国による総体的な投資計画であり、具体的な国別配分や装備数は今後の各国調達で決まります。

参考資料

NATO、NATO ACT、米陸軍の公式資料をもとに整理しています。400億ドルの国別配分や個別装備の調達数は、確認できないため推測していません。

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