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海自「ちょうかい」がトマホーク初実射 日本の反撃能力は何が変わった?

 
海上を航行する海上自衛隊の護衛艦ちょうかい DDG-176

画像:U.S. Navy / DVIDS / Public Domain

2026年7月29日、海上自衛隊のイージス護衛艦(弾道ミサイル警戒と防空を高い精度で同時にこなす高性能レーダーシステムを積んだ艦の総称)「ちょうかい」が太平洋上でトマホーク巡航ミサイルを実射しました。日本の護衛艦がトマホークを実際に発射したのはこれが初めてです。重要なのは「長射程ミサイルを買った」ことだけではありません。改修、乗員教育、発射能力の確認を経て、海自の艦艇が実際に発射まで行ったことです。

2026年3月に「発射能力」、7月に「実射」まで進んだ

「ちょうかい」は2025年秋から米国へ派遣され、米海軍の支援を受けて艦艇の改修と乗員訓練を進めてきました。防衛省は2026年3月27日、これらを完了し、同艦がトマホーク発射能力を獲得したと正式発表しています。

ただし3月時点では、まだ実射による確認が残っていました。防衛省は「夏頃まで」に実射試験などを行い、乗員の練度を含め実任務へ移れることを確認するとしていました。その次の節目が7月29日の初実射でした。

海上自衛隊護衛艦「ちょうかい」がトマホーク巡航ミサイルを発射する瞬間(2026年7月29日)
「ちょうかい」からのトマホーク発射(2026年7月29日) 出典: 防衛省(CC BY 4.0)

「最大400発」は正式な取得枠

日本政府が米国から取得するトマホークは最大400発です。防衛省は、Block IVを最大200発、Block Vを最大200発とする米側の売却通知を2023年に説明しています(Block IV/Vはトマホークの製造世代を示す型式番号で、Vの方が新しく、標的追跡能力などが強化されています)。

当初は2026年度と2027年度にBlock Vを取得する計画でしたが、安全保障環境を踏まえて一部をBlock IVへ変更し、取得開始を2025年度へ1年前倒ししました。2026年3月時点で防衛省はすでに自衛隊への納入が始まっているとしています。

ここで「400発すべてを『ちょうかい』に積む」という意味ではありません。400発は取得計画全体の上限であり、実際の艦ごとの搭載数や平時の搭載構成は別の問題です。

トマホークは「反撃能力」にも使われる

日本政府はスタンド・オフ防衛能力を、侵攻する艦艇や上陸部隊などを早期・遠方で阻止・排除するための能力と説明しています。そのうえで、さらなる武力攻撃を防ぐための「反撃能力」にもスタンド・オフ・ミサイルを活用し得るとしています。

防衛省の説明では、相手国を先に攻撃するための能力として位置付けているわけではありません。相手から武力攻撃を受けた場合に初めて行使される、自衛のための必要最小限の防衛力という政府見解が維持されています。

それでも、海上を移動するイージス艦から長距離精密攻撃手段を使えるようになることは、従来の防空・ミサイル防衛中心だった海自イージス艦の役割を広げる大きな変化です。

トマホーク巡航ミサイルが艦艇から発射され上昇する様子(米海軍)
トマホーク巡航ミサイルの発射(米海軍撮影、資料写真) 出典: 米海軍 / Public Domain

なぜ「ちょうかい」が最初だったのか

「ちょうかい」はこんごう型イージス護衛艦の4番艦です。米国派遣に合わせてトマホーク発射機能を付加する改修と乗員教育を実施し、日本のイージス艦で最初に発射能力を確認しました。

トマホークはMk 41垂直発射システム(VLS。ミサイルを1発ずつ縦に収めた発射筒を甲板下にまとめて並べ、必要なミサイルだけを瞬時に選んで撃ち出せる装備)から発射されますが、ミサイルを物理的に発射筒へ入れれば使えるという装備ではありません。武器管制、ソフトウェア、通信、任務計画、乗員教育を含むシステムとして統合する必要があります。米海軍との約半年にわたる改修・訓練が重要だった理由です。

海上自衛隊イージス護衛艦「ちょうかい」(RIMPAC2016参加時)
こんごう型イージス護衛艦「ちょうかい」(RIMPAC2016) 出典: 海上自衛隊(CC BY 4.0)

北朝鮮が名指しで警戒した

実射後、北朝鮮側も日本の長距離打撃能力への批判を強めました。ロイターは8月、金正恩総書記の妹である金与正氏が日本のトマホーク発射試験を受け、「追加の軍事的選択肢」に言及したと報じています。

北朝鮮は以前から、日本の長射程ミサイル整備を「攻撃的な軍事力への転換」と批判しています。一方、日本政府は反撃能力を自衛のための必要最小限の能力と説明しており、両者の認識は大きく異なります。

「追加の軍事的選択肢」が具体的に何を意味するのかは公表されていません。新型兵器の配備や特定の訓練を指すと断定することはできません。

トマホークだけで反撃能力が完成するわけではない

日本はトマホークに加え、12式地対艦誘導弾能力向上型(陸上自衛隊の国産対艦ミサイルを改良し、艦艇だけでなく地上の目標も遠方から狙えるよう射程を伸ばした発展型)など国産スタンド・オフ・ミサイルの整備も進めています。トマホークは国産ミサイルが必要量そろうまでの能力を早期に補完する位置付けです。

したがって7月29日の一発は「日本の反撃能力が完成した日」というより、構想・契約・艦艇改修の段階から、実際の運用へ移る過程が一段進んだ出来事と見る方が正確です。

まとめ

「ちょうかい」は2026年3月にトマホーク発射能力を獲得し、7月29日に初の実射まで進みました。日本は最大400発を2025~2027年度に取得する計画で、スタンド・オフ防衛能力と反撃能力の一部に活用します。

この実射は日本の防衛政策を一発で別物に変えたというより、2022年以降に進めてきた反撃能力の整備が、海自艦艇の具体的な運用能力として姿を現した節目です。北朝鮮が強い反応を示したことも、周辺国がこの変化を安全保障上の要素として計算に入れ始めたことを示しています。

編集部の視点

編集部が注目するのは弾の威力そのものより、「約半年の改修・訓練を経て、艦のシステムとして統合できた」という一点です。トマホークという兵器自体は既に世界中で運用実績があり珍しくありません。日本にとっての本当のハードルは、武器管制・通信・任務計画・乗員教育を一つの艦の中で束ね、実際に撃てる状態まで持っていく運用能力の方にありました。今回「ちょうかい」が最初にそれを実証したことで、残る艦への横展開や、国産の12式改良型との役割分担が今後の焦点になると編集部は見ています。

参考資料

2026年8月12日時点の公開資料をもとに整理しています。具体的な平時搭載数、任務計画、目標選定手順など公表されていない運用情報は推測していません。

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