オスプレイは本当に危険なのか 事故率データを機体・時期・原因で読み解く
画像:U.S. Air Force photo by Senior Airman Derrick Bole/6th Air Refueling Wing(2025年3月11日、マクディル空軍基地)。DVIDS掲載、Public Domain。
V-22オスプレイは「事故が多い危険な機体」と語られがちです。しかし2025年12月に米議会監査院(GAO)と海軍航空システム軍団(NAVAIR)が相次いで公表した報告書を読むと、実態はもっと入り組んでいます。事故率は運用する軍によって大きく違い、原因も一つではなく、時期によって性質が変わっています。ここでは機体・時期・原因を分けて、公表されている最新データを整理します。
「危険」を数字で確認する
米議会監査院(GAO)は2025年12月8日付、12日公開の報告書「Osprey Aircraft: Additional Oversight and Information Sharing Would Improve Safety Efforts」(GAO-26-107285)で、オスプレイは2022年以降に死亡事故4件を起こし、20人の隊員が死亡したと述べています。同時期に公表されたNAVAIR包括レビュー(2023年9月着手、2025年12月12日公表)は、この4年間で合計12件のクラスA事故(死亡・機体喪失・重大損害を伴う最重度区分の事故)が発生し、うち4機が失われたとしています。
GAOはさらに、2023・2024会計年度の重大事故率が過去8年間の平均と比べて悪化したと指摘しました。海兵隊は2015〜2022年度平均より36%、空軍は88%それぞれ高い水準だったとしています。一方で海軍のCMV-22Bは、2021会計年度に運用を始めて以来、クラスA・クラスBの事故が一件も報告されていません。
機体によって事故率はまったく違う
オスプレイは海兵隊MV-22B(約348機)、空軍特殊作戦軍のCV-22B(約52機)、海軍CMV-22B(約29機、空母への物資・人員輸送用)という3種類が別々に運用されています。米議会調査局(CRS)が2025年9月12日付の報告書でまとめた2015〜2024会計年度のクラスA事故率(飛行10万時間あたり)を見ると、機体ごとの差は明確です。
海兵隊MV-22Bは10万時間あたり2.56件で、海兵隊機全体の平均2.67件とほぼ同水準、むしろやや低めです。これに対し空軍CV-22Bは11.55件と、空軍機全体の平均1.65件を大きく上回ります。海軍CMV-22Bはこの期間、クラスA事故も死者もゼロでした。つまり「オスプレイは危険」と一括りにする前に、どの軍のどの型式かを分けて見る必要があります。
2022年以降の死亡事故、原因は少なくとも2系統ある
2007年の実戦配備以降、オスプレイの事故による死者は累計35人(海兵隊23人、空軍12人)とCRSは集計しています。このうち2022年以降の4件・20人を個別に見ると、原因は一様ではありません。
2022年3月18日、ノルウェーでのNATO演習「コールド・レスポンス」中の墜落で4人が死亡しました。CRSはこれを一部パイロットの操作要因によるものとしています。2022年6月8日には米カリフォルニア州の砂漠地帯(エルセントロ/グラミス周辺)で海兵隊機が墜落し、海兵隊員5人が死亡。原因は「ハード・クラッチ・エンゲージメント(HCE)」と呼ばれる、エンジンとプロップローターギアボックスをつなぐクラッチが異常係合する現象で、飛行800時間を超えて摩耗したインプット・クイル・アセンブリが根本原因とされました。
2023年8月27日、豪州での多国間演習中の墜落で3人が死亡し、こちらも一部パイロット要因とされています。そして2023年11月29日、日本の屋久島沖で空軍CV-22Bが墜落し、隊員8人が死亡しました。事故調査は左プロップローターギアボックスの破局的な破損が原因とし、内部のピニオンギア(歯車)1個が製造上の欠陥に由来する亀裂で破断したと結論づけています。HCEとギアボックス破損は原因も再発防止策も別物で、同じ「オスプレイの事故」でも中身は異なります。
今も続く飛行制限、解除目標は2026年末
米海軍はHCE対策として、2022年6月の事故後にクラッチ800時間超の機体の交換を命じ、2023年2月にはインプット・クイル・アセンブリの飛行時間制限を導入しました。海兵隊広報は2026年7月、この制限導入以降「HCEは一件も発生していない」と説明しています。
一方、2023年11月の屋久島沖事故を受けて全機が一時飛行停止となり、2024年3月以降は「適切な緊急着陸可能飛行場から30分以内」で飛行するという制限付きで運用が再開されました。原因となったギアボックスのピニオンギアは、不純物(介在物)を約90%低減できるとされる「トリプルメルト鋼」製への換装が2026年1月から順次始まる計画で、国防総省はこの改修完了に合わせて2026年末までに無制限運用へ戻すことを目標に掲げています。ただし本稿執筆時点で全機の制限解除が完了したという公式発表は確認できていません。
GAOとNAVAIRが指摘した「事故そのもの」以外の問題
GAOとNAVAIRの報告書は、機材の欠陥だけでなく運用体制の問題も指摘しています。NAVAIRのレビューは、事故につながるリスクの蓄積要因として、既定の耐空性・飛行安全手順への不遵守、材料面・非材料面の対策実施の遅れなど4点を挙げ、改善に向けた32項目の提言をまとめました。
GAOは特に、海兵隊・空軍・海軍という3軍のあいだで安全情報の共有が不十分だった点を問題視しています。2020年から2025年まで5年間、3軍合同でオスプレイの機体知識や緊急時手順を確認する会議が一度も開かれていなかったとGAOは指摘しました。
2026年2月、議会が問うた「ハンガー・クイーン」
米下院軍事委員会の小委員会は2026年2月10日、V-22の運用状況をめぐる公聴会を開きました。退役海兵隊中将でもあるジャック・バーグマン下院議員は、部品や整備待ちで長期間飛べない機体(いわゆる「ハンガー・クイーン」)の多さを問題視し、この場では海兵隊MV-22の稼働率がおよそ50%、海軍の型式はおよそ40%にとどまっているとの数字が示されました。これとは別に、NAVAIRのレビューが示した2020〜2024年の平均稼働率は、海兵隊が約60%、海軍・空軍特殊作戦軍がそれぞれ約50%となっており、測定時点や集計方法によって数値の見え方が変わる点には注意が必要です。
海兵隊は359機で調達完了、日本の陸自機は佐賀へ
海兵隊は2026年7月28日、MV-22Bの359機目を受領し、同型機の調達計画(プログラム・オブ・レコード)を完了しました。初期配備から約20年での節目です。海兵隊広報はこの受領にあわせ、新型プロップローターギアボックスや新しいインプット・クイル・アセンブリの導入を進め、2055年までの運用継続を目指すとしています。
日本の陸上自衛隊もV-22(MV-22B相当)を17機保有しています。木更津駐屯地(千葉県)への暫定配備を経て、2025年8月に佐賀駐屯地への移駐が完了しました。木更津は現在、定期機体整備の拠点として機能しています。陸自機について、これまでクラスA相当の重大事故は公表されていません。ただし陸自の運用機数・飛行時間は米軍全体よりはるかに小さく、事故が報告されていないことをもって安全性が統計的に実証されているとは言えない点は留意が必要です。
まとめ 「危険かどうか」より「どこが、なぜ」
V-22オスプレイの安全性は、一言で「危険」とも「安全」とも言い切れません。海軍CMV-22Bは事故ゼロ、海兵隊MV-22Bの長期事故率は海兵隊機全体の平均と同水準か、それをやや下回ります。一方で空軍CV-22Bの事故率は空軍全体平均の7倍近くに達し、2022〜2024年度には海兵隊・空軍とも事故率が過去平均を上回りました。原因もクラッチの異常係合とギアボックスの部品破断という別々の機械的問題が重なっており、それぞれ別の対策と別のタイムラインで進んでいます。
GAOとNAVAIRの報告書が示すように、残る課題は機体そのものだけでなく、3軍にまたがる安全情報の共有体制や、稼働率の低さといった運用面にも及びます。2026年末に予定される飛行制限の全面解除と、それ以降の事故率の推移が、この機体の評価を左右する次の焦点になります。
参考資料
- U.S. GAO:Osprey Aircraft: Additional Oversight and Information Sharing Would Improve Safety Efforts(GAO-26-107285、2025-12-08/12-12公開)
- NAVAIR:NAVAIR Releases V-22 Comprehensive Review Findings(2025-12-12)
- Congressional Research Service:V-22 Osprey Aircraft: Background and Issues for Congress(R48703、2025-09-12)
- USNI News:'Hangar Queens' Congressional Hearing Reveals Osprey Readiness Rates Declining as Mishaps Increase(2026-02-10)
- Breaking Defense:V-22 will fly with restrictions until 2026(2025-04)
- DefenseScoop:After 20 years of deployment, Marine Corps receives final Osprey amid upgrades and some flight-hour restrictions(2026-07-28)
- 木更津市:陸上自衛隊オスプレイの佐賀駐屯地への移駐について
- DVIDS/U.S. Air Force:MV-22B Ospreys fly over MacDill(2025-03-11、Public Domain)
2026年8月22日時点で確認できる公開資料をもとに整理しています。屋久島沖事故のピニオンギア破断に関する技術的な最終原因の呼称は資料により表現が異なるため、本稿では公表レビューの記述に沿って「製造上の欠陥に由来する亀裂」とまとめています。2026年末の飛行制限全面解除は国防総省が示す目標であり、本稿執筆時点で完了は確認できていません。
